広告の収益性&ユーザー体験の二兎を追いつづけるPMの苦悩

こんにちは。 Amebaでプロダクトマネージャーをしている大西です。 普段はAmeba Pickというアフィリエイト機能の改善、ブランディング、広告全般など、幅広くAmebaブログに関するプロダクトに携わっていますが、今回はアドネットワーク領域についての体験談をお話ししたいと思います。

著者:大西 絢子 撮影:飯野 敦博 クリエイティブ:権藤 直人

  • 大西 絢子
    サイバーエージェントに2020年新卒入社。 AmebaLIFE事業本部にて、エディタ関連の新機能開発、ブランド営業、Google Ad Managerを使ったブランド広告配信の開発などを経て、現在はアフィリエイト機能AmebaPick、広告全般のプロダクトマネージャーとして従属。Ameヨコの管理人もしてます。

特命プロジェクトとして発足

2023年10月、突如1on1が組まれ、恐る恐る事業責任者がいるカフェテリアに向かいました。

事業責任者

アドネットワークの新フォーマット開発をしてほしい。

大西

アドネットワークですか…なるほど…。

それまで自分はアドネットワークに関わる開発をしたことがなかったため、どのような開発をするのか全くイメージがついていませんでした。しかし、これまでのプランナー、営業、PM(サービス関連施策&ブランド広告関連施策)経験を活かし、Amebaのプロダクト品質を考慮した新たな収益源を作ろうという思いで、プロジェクトを始動することにしました。

特命プロジェクトのNotionキャプチャ
※私はNotion大好き人間なのでこのプロジェクトもNotionで管理しました(笑)

今回はアドネットワークに片足を突っ込んだPdMの自己流新広告フォーマット開発法についてご紹介しようと思います。

アドネットワークの新広告フォーマットとは?

昨今のアドネットワーク業界では、インタースティシャル広告やオファーウォールなど単価の高い全画面広告が主流になってきています。


広告主側も最新の広告フォーマットの改良を行い、質の良い広告が徐々に集まるのではないかと考え、バナー配信のような記事内の枠に低単価の広告を表示して数で勝負するのではなく、1広告あたりの単価をあげ、ユーザーごとに最適なタイミングで広告配信することでユーザーの収益LTVを最大化していくことが狙いです。

今までの広告フォーマットとの違い

Amebaでも過去何度もこのような単価の高いプレミアムフォーマットの導入を検討してきましたが、UXを鑑みるとなかなか導入決断ができず、今回プロダクト品質の計測をすることを前提に導入判断がなされました。

私はそのような高単価広告フォーマットや既存体験を損ねる可能性の高く導入を渋っていたフォーマットの導入を総称して「新広告フォーマット」と呼んでいます。


今回私が新しく導入した新広告フォーマットはこちらです。

  1. 記事中広告の動画広告
  2. オーバーレイ(高さ100px)
  3. ブラウザバック(離脱)広告
  4. インタースティシャル広告
  5. webリワード広告

ユーザー体験を加味した新広告フォーマットの導入手順

ここからは導入手順をお話ししようと思います。

冒頭にも話したように、今回の新広告フォーマット開発は広告収益とユーザー体験の双方を考えた上でプロダクト品質全体が向上するような開発をする必要があったため、検証設計にこだわりました。



アドネットワーク広告は事業者に実装してもらったり、配信運用をしてもらうこともあり、フローは一概に言えませんが、ざっくり言うとこちらになります。

新広告フォーマット導入フロー

私はまだアドネットワーク業界に入ったばかりで、SSP事業者についてもほとんど知識がない新参者です。そのため、業界の情報を学びながら判断する必要があり、難易度が高かったです。


また開発体制については特命PRJとしてUI/UXデザイナー、ウェブフロントエンジニア、プランナー(リリース後の運用者)のアサインを行いました。

私がこだわったAmebaでの「広告プロダクト開発」

私は新卒でAmebaに所属し、4年間あらゆる角度からAmebaブログを見てきました。

ユーザー体験の向上をメインミッションとして開発をしてきた自分にとって、今までの経験を活かした広告プロダクト開発をしたく、プロダクト品質の定義づくりにこだわりました。


あくまで私が今まで思っていたイメージにはなるのですが、広告プロダクト開発は収益とユーザー体験がトレードオフになっている印象があります。しかし、これらの開発は「ユーザーさんにこれからも長くサービスを使っていただくための開発」になるので、そのバランスが取れるような設計を行いました。


従来の広告プロダクト開発との違い

また、私が今までしてきたサービス開発はユーザーに提供する価値のみにフォーカスし、どれだけのビックチェンジまたは大幅なプラスのユーザー体験を作り出すかを追求していましたが、今回の広告プロダクト開発は広告主に提供する価値とユーザーに提供する価値の総価値をどう上げていくかについても検討を重ねました。

広告PMのジレンマ

収益とユーザー体験のバランスを加味した開発をすると言っても、そう簡単ではありませんでした。


広告についてもあまり知識がない状態だったので、周りのメンバーを巻き込みながら考慮しなければならない点を一つずつ可視化していき、一つずつ懸念点を潰していきました。


①収益性とユーザー体験の管理

ユーザー体験を守りすぎても収益性が見込めないと”良い”プロダクトとしては見なされません。収益とユーザー体験のバランスを見て都度方針を決めていかなければいけませんでした。


②広告業界においてあまり構築されていないプロダクト品質の定義づくり

プロジェクトを始動してから様々な事業者と話をしましたが、他サービスの導入事例を聞いても、広告UIや広告内容にまでこだわりながらプロダクト設計を行い、PV単価を上げるための施策検証をしているサービスはほとんどないと言われました。


そのため、自分のサービス開発経験を活かして、どのように品質を担保するかを設計する必要がありました。


③チームメンバーの合意形成

以前の私もそうでしたが、やはりものづくりをしている人からすると、広告という存在はかなり遠くにあるもので、「広告=悪」のイメージをいかに払拭させ、メンバーの士気を高めるかということも考える必要がありました。


④Amebaの広告品質へのこだわり

導入するときに最も心掛けていたのが「広告だからこそ品質にこだわる」ということです。ただ「広告を入れましょう」といっては、一生懸命ユーザーさんへ良いプロダクトを作り続けているメンバーからしたら少々抵抗感を持つことは自然です。(私も最初はそうでした)同じ気持ちを持っているからこそ、現状と自分の想いをできるだけ丁寧に伝わるように話し、一緒に品質をモニタリングしていくことにしました。

プロダクト品質の計測方法

期限付きのプロジェクトでもあったため、導入時にプロダクト品質を加味した設計をする際に3つ既存仕様を活用しました。


①広告ポリシー

Amebaとして元々広告表示のルールとして設けていたものを参考に、新広告フォーマットの仕様を策定しました。


②ユーザーのロイヤリティに合わせたセグメント

ユーザーのPV情報を参考にし、Amebaのロイヤリティを定義しているセグメントを活用して、配信調整を行いました。


③PPS(page per session)の計測環境作り

今回はweb面での広告配信だったので、1セッションあたりのPVが大きく変動しないようにPPSのモニタリングを行いました。

これからのAmeba アドネットワーク配信

現在Amebaのアドネットワーク広告はより最適な広告体験を実現するために様々な試みをしています。


1つ目は、今回ご紹介したプロダクト品質の計測方法のアップデートです。

今回はかなり人力で、度重なるリリースとBigQueryやTableauを使ったPPSの分析を都度行っていたのですが、この検証をより簡略化するための方法を模索しております。


2つ目はより精度の高いユーザーのLTVに合わせた最適配信です。

Amebaは大きなプラットフォームであるが故に色々な用途でサービスを利用してくださる多くのユーザーさんがいます。その方々に最適な広告を配信し、より長くサービスを使い続けていただけるように我々は今後もあらゆる取り組みをしていこうと思っています。


そして3つ目は広告内容に関する配信規制の強化です。Amebaでは毎日私一人では見きれないほど多くのアドネットワーク広告が配信されています。ユーザーに対して適切な情報をできるだけ配信できるように新たな配信ルールを日々強化していく予定です。


また、広告の内容だけでなくオファーウォールのような一時の利益に目が眩んでしまうような高単価広告フォーマットに関しても、正しく検証を行い、閲覧体験とのバランスを守りながら配信を検討していくつもりです。

最後に

Ameba LIFEは「つくる、つむぐ、つづく、」をビジョンとして「人と情報をつむぎ、暮らしが豊かに育ちつづけるための機会をつくる」をミッションとし、これからも人々の暮らしを豊かにするサービスを提供し続けていきます。


このようなビジョンやミッションに共感していただけるプロダクトマネージャー(PdM)の方を募集しております。


今回の記事でサイバーエージェントに興味を持った方は以下のURLよりエントリーをお待ち しております!

作業をする女性
  • 著者大西 絢子
  • 撮影飯野 敦博
  • クリエイティブ権藤 直人

公開日:

最終更新日: