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「ダウン症の娘をもって」ブログと歩んだ20年の軌跡

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    ダウン症をもって生まれ、現在「みんなが笑顔になれるモデル」を目指して日々活動している菜桜(なお)さん。2024年3月には念願のパリコレデビューを果たし、障がいがあっても夢を叶えていく姿が多くの人の感動を呼びました。ブログでは、母・由美さんの目線から等身大の菜桜さんの日常が綴られています。

ダウン症の我が子を受け入れられなくて始めたブログ

私がブログを始めたのは、菜桜(娘)が生まれた2004年のこと。

そこから10年ほどほかのブログサービスを使っていましたが、2014年からはアメブロへ移行しました。実はブログを始めたのも、我が子のダウン症を受け入れられていない状況があり、その苦しみを知ってもらいたいという思いからだったんです。

当初は“私こんなに大変なんだよ”の一心で発信していましたが、いまはもう“菜桜を見て!”という思いに変わりましたね。その最初のきっかけはたしか、産後二ヶ月半経ったときに、菜桜が私を見てニコッと笑ったこと。

すごく汚い言葉かもしれませんが、産後すぐはダウン症の娘を受け入れられなくて。なんにも可愛く思えないし、この子をどうしよう?ということばかり考えていたんです。でも娘に笑いかけられて「あぁこの子、こんなに可愛かったんだ」って。その日から少しずつ写真の枚数や、(当時は入院中だった菜桜との)面会時間などが増えていきました。

そして菜桜が小学校高学年に上がったあるとき「次に生まれ変わったとしても、ダウン症の菜桜を産みたい」って思えたんです。それまでは、ダウン症じゃない娘だったらどうだったのかな、なんてことをずっと想像していたんですけどね。本人は、普通に生まれてきたかったよ、とか、今回の人生で終わりだよ、なんて言うかもしれないけれど(笑) いまはもうダウン症の娘しか想像できないし、生まれ変わってもこのままの娘を産みたいって素直に思えるんです。

アメブロ担当者との出会いから、ありのままが見せられるように

アメブロに移って感じたことは、広く見てもらえるようになったこと。

ほかのブログを使っていたときはダウン症の子をもつお母さんたちとしか交流がなかったのですが、アメブロに移ってからは、それ以外の方からもコメントをいただくようになって。いまではいろんな立場の方がブログを読んでくださっていることがすごく実感できます。


それでも実は、ありのままの気持ちを書いたら炎上するんじゃないかという恐れがあり、ずっとどこかで理想の自分を装って発信していたところがありました。

でも、何年前だったかな、アメブロでついてくださった担当の方がとてもいい方で。こまめに連絡をくれたり、ブログ案をくださったりして。私もその方のことが大好きで、自分や菜桜を綺麗に飾らなくてもいいんじゃないかと思えるようになったんですよね。

そこからは課金事件*のように、恥ずかしくて人には言えなかった失敗も、素直に出せるようになりました。思いきって公表したことで“うちの子もそういう可能性があるんだと気づきました”と言われると、菜桜の失敗が役に立ってよかったなと。


いまでは、アンチに言われてショックだったことも素直に書けるし、苦しいって言えば皆さんが気遣ってくださるし、ブログは自分のすべてを出せる場所という感じ。皆さんとのやりとりがあるから、私は安心できるんだと思います。


※知らないうちに菜桜ちゃんがスマホのゲームアプリに課金してしまい、ある日高額請求が手元に届いたというエピソードのこと。

些細な情報でも必要としている人はどこかにいる

今後もブログでは、菜桜が生きている証というか、ありのままを伝えていきたいなって。障がいがあってもモデルという夢を見つけて頑張っている菜桜の姿はもちろん、その裏にある課金事件のような失敗や“ダウン症の子を育てる”ということの難しさについても発信していきたいと思っています。


その理由のひとつが、いつか誰かの役に立つかもしれないという思い。

私が娘を産んだときには「食道閉鎖症 ダウン症」でネット検索しても、何も情報が出てこなかったんですよ。今だったらヒットしたブログにDMで質問したりもできますが、当時はそういうことができなかったので、変えていけたらいいなって。


それに、過去を遡れば記録がある状態ってやっぱりすごく大きいです。

自分の気持ちや子どもの成長の記録にもなりますし、検索した誰かの参考にもなるんじゃないかな。たとえばおでかけ場所だったら“今度ここ行ってみよう”、子どもの成長だったら“この先はこんなふうに成長していけるんだ”というように。


だからといって、毎日ブログを続けようとしなくてもいいと思うんです。まずは“これ載せてみようかな”という感覚で発信していったらいいのではないでしょうか。どんなに些細な日々のことでも、その情報を必要としている人が絶対どこかにいるはずですから。

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